【インタビュー】奏人心、2nd EP『風がゆく若色の街』リリース! インディーデビューから9か月、「僕はいま、奏人心と生きている」

三橋 温子

三橋 温子

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福岡で活動するスリーピースロックバンド・奏人心(そうとしん)が、8月6日(水)に2nd EP『風がゆく若色の街』をリリースした。今年で20歳を迎える3人が「思春期の終わり」を描いた、4曲でひとつの物語を紡ぐような作品だ。

2024年のインディーデビュー時のインタビューから早9か月。その間に彼らはライブを積み重ね、毎日を繊細に生き、バンドの個性が色濃く表れる今作を完成させた。10月1日(水)には初の東京ワンマンライブも控える彼らに、今作に込めた思いや現在の心境をインタビュー。


INTERVIEW

あとむの歌声が文豪なら、私はフラダンサー

Photo by hisatomaru

Vocal / Bass 永松有斗夢(以下:あとむ)
Vocal / Guitar 山路あげは(以下:あげは)
Drums / Chorus 今橋一翔(以下:まさと)
アップロードした画像ライター三橋

『風がゆく若色の街』、20歳を迎える3人の“いま”を捉えたコンセプチュアルなEPだと思いました。シングルとして先行リリースされた1曲目「それがすべて」は、ギターの山路あげはさんがボーカルを務めた、バンドの新境地ともいえる楽曲ですね。

アップロードした画像あとむ(Vo./Ba.)

はい。この曲は、あげはがもともと弾き語り用に作っていた曲なんです。むき出しの“生”なところが魅力だと思っています。

アップロードした画像ライター三橋

あげはさんが歌うことになったのは、どんな経緯からですか?

アップロードした画像あげは(Vo./Gt.)

これまで人前で歌うことはなかったんですが、2024年の春にたまたまライブで弾き語りをする機会があって、そこで歌ったのが「それがすべて」でした。

そのとき、あとむが共演者としてブッキングされていて、まさとも観にきてくれていたんですけど、私のステージを観た2人が「この曲を奏人心でもやろう」と言ってくれたのがきっかけです。

アップロードした画像まさと(Dr./Cho.)

あげはがメインで歌うはじめての曲であり、僕たちもとても気に入っている曲。作品にできて嬉しいです。

アップロードした画像ライター三橋

あげはさんのボーカルとメロディラインがとても力強く叙情的で、“真っ向勝負!”という感じの曲ですよね。はじめて聴いて以来、ずっとイヤーワームです。

3曲目「フィールドアンドサンセット」も、あげはさんがボーカルを務めていますね。

アップロードした画像あげは(Vo./Gt.)

この曲の舞台は、私が小学生のころに引っ越してきて、いまも住んでいる街。歌詞をご覧いただくとわかると思いますが、田舎です。

引っ越してきた10年前は、この街のすべてが嫌だと思っていたんですが、「もしかしたら、そろそろこの街を出るかもしれないな」と思ったときに、この10年間が走馬灯のように蘇ってきて……。そんな情景を描きました。

〈泣いてばかりいてどうするの あの子はもう行ったんだよ〉という歌詞は、誰かにも言っているし、自分にも言っている言葉です。

アップロードした画像まさと(Dr./Cho.)

僕のドラムはシンプルなんですけど、激しめのギターやそこに乗っかるベースが心にガンッ!とくる曲です。

アップロードした画像ライター三橋

あとむさん&あげはさんの2人がボーカルを担当するようになって、バントとしてはどんな手応えを感じていますか?

アップロードした画像あとむ(Vo./Ba.)

幅がとても広がったと思います。あげはの歌は、力強さのなかに優しさがあって、その時々で柔軟に心に寄り添ってくれる。とてつもなくいいと思っているので、これからも楽しみです。

アップロードした画像あげは(Vo./Gt.)

あとむと私のボーカルは対照的な気がしています。あとむが文豪なら、私はフラダンサー。逆のときもあります。そのくらい硬さと柔らかさの違いがあるので、バンドとしてすごくおもしろいし使えるなと思っています。

アップロードした画像まさと(Dr./Cho.)

2人の歌はそれぞれ違ったよさがあって、どちらも抜けた才能を感じる声質。これを活かしたら奏人心の曲幅も広がるし、やれることがいろいろ見えてくる。バンドとしての新たな道を見つけた感覚ですね。

歌詞も歌も、シンプルにしたほうが伝わる
アップロードした画像ライター三橋

あとむさんがリードボーカルの2曲目「ユース・キャンドル」と4曲目「sin」は、それぞれどんな思いを込めた曲ですか?

アップロードした画像あとむ(Vo./Ba.)

自分の性格なのか、若さゆえなのか、わけもなくすごく焦ってしまうときがあって。「ユース・キャンドル」はそんな自分の思いから作った曲ですが、歌詞にある〈3月を照らす街灯が 焦りをはらんだ僕達に 何かを探す道すがら 足下を照らし立っている〉というフレーズは、焦っている自分に「一度立ち止まって足下を見てみろよ」と言ってくれている気がしてとても好きです。

アップロードした画像まさと(Dr./Cho.)

あとむとあげはのダブルボーカルになる部分が心地よくて、聴いてくれる人も気に入ってくれるかなと思いながらレコーディングしていました。

アップロードした画像ライター三橋

どっしりとしたベースラインに2人の声が重なって、安定感と浮遊感をいっぺんに感じるような不思議な聴き心地でした。もう大人なんだけど大人になりきれない感じが滲み出ている……というのは私の勝手なイメージですが。

「sin」は、ギターが美しいイントロから疾走感あふれるラストまで、さまざまな表情を見せてくれる曲ですね。ライブ映えしそう。

アップロードした画像あとむ(Vo./Ba.)

途中でBPMがめちゃくちゃ速くなるんですけど、感情の起伏やどうにかして救われたい気持ちが伝わってくるような曲です。

アップロードした画像まさと(Dr./Cho.)

ドラムのテンポをクリックに合わせて正確に叩くのが難しかった……。

アップロードした画像ライター三橋

今回のEPは、2024年11月リリースの1st EP『SEARCH感受YOUTH』と比べてどんなところが進化したと感じていますか?

アップロードした画像あとむ(Vo./Ba.)

前作は初のEPだったこともあって、「やりたいだけ全部出す」「気持ちの赴くままに」という感じでしたが、今作はどしっと構えて作れたと思います。あげはのボーカル曲など新たなチャレンジもしたし。ただ、作品に込めた思いの強さみたいなものは、前作以上に固く強くなったと感じています。

アップロードした画像ライター三橋

一人ひとりの演奏を粒立たせたサウンドメイクや、耳に残るシンプルなリフなど、前作で感じた奏人心らしさは今作でも強く感じました。そうした部分は曲作りで意識しているのでしょうか?

アップロードした画像あとむ(Vo./Ba.)

歌詞も歌も、シンプルにしたほうが伝わると思っています。僕が音楽でいちばん大事にしていることですね。

アップロードした画像ライター三橋

あげはさんが描く“MANGA”のジャケットも毎回楽しみにしています。今作のアートワークはどんなイメージで描いたのでしょう?

アップロードした画像あげは(Vo./Gt.)

ありがとうございます、嬉しいです! 今回は、あとむがつけたEPのタイトル『風がゆく若色の街』を自分なりに解釈して描きました。3人の背景には、福岡に実在するビルや看板を描いています。

私、松本大洋の漫画が大好きなんです。ページを開いたときに視界に入ってくる情報の満足度というか、余すところなくページいっぱいに描かれている絵がすごく好きで。今回のジャケ写はかなり松本大洋リスペクトだと思います。

アップロードした画像ライター三橋

なるほど! 松本大洋み、あります。絵を描くのは昔から好きだったんですか?

アップロードした画像あげは(Vo./Gt.)

はい。小学生のころは、週に1回、みんなが好きそうな絵を描いて掲示板に貼る「イラスト係」をしていた記憶があります。目が点のドラゴンボールとか、Tシャツ着てるミッキーマウスとか、大笑いするほどじゃないけど、目が合ったらちょっと「ふふっ」てなるかなと思って描いていました。

最近は、漫画からインスピレーションを得たり、スマホに入っている何気ない写真をモチーフにしたり。描きたいものがある場所まで写真を撮りに行くこともあります。フライヤーのイラストとかも描いているので、今後もぜひ注目してもらえたら嬉しいです。

初の東京ライブは「とにかくワクワク」「大挑戦」
アップロードした画像ライター三橋

2024年11月のインディーデビューから9か月が経ちましたが、バンドを取り巻く環境やご自身の心境に変化はありましたか?

アップロードした画像あとむ(Vo./Ba.)

この9か月、あっという間でした。環境が劇的に変わったわけではないけど、以前より人目に触れるようになって、信頼できる人が少しずつ増えて、よくも悪くもいろんなことを言われるようになりました。

そういうのもあって、僕はいま、奏人心と生きているんだと実感しています。それだけ生活の矢印はバンドに向いています。

アップロードした画像ライター三橋

「奏人心と生きている」。素敵な言葉……。

ライブや曲作りなど忙しい日々だと思いますが、リフレッシュはできていますか?

アップロードした画像あとむ(Vo./Ba.)

本を読んだり映画館に行ったりしてリフレッシュしています。

アップロードした画像あげは(Vo./Gt.)

私も映画が好きで、家にいるときはだいたい映画を観ています。最近では『Flow』というアニメーション映画がすごくよかったです!

ホラー以外ならなんでも観ますが、夏だし、もう大人だし、ホラー挑戦もアリかもしれない……(笑)。

アップロードした画像ライター三橋

最近観たコワイ系では『カサンドラ』がおすすめです(笑)。

3人とも今年で20歳を迎えるということで、「ユース・キャンドル」の歌詞にもある〈思春期の終わり〉をまさに生きていると思います。いまの自分の状況を率直にどう感じていますか?

アップロードした画像あとむ(Vo./Ba.)

焦りを感じることもあるけど、その焦りもこれからの自分に必要なことのような気がしています。焦ってスキップして大事なことを見逃してしまわないようにしたいです。

アップロードした画像あげは(Vo./Gt.)

自分に対して「全然子どもじゃないか」と思う瞬間のほうが多くて、こんなのでいいのかしらと思うこともしょうっちゅうあります。だけど、「気がつかないところでいつの間にか大人になっている」というのが大人なんじゃないかなとも思います。

アップロードした画像ライター三橋

10月1日には下北沢THREEでワンマンライブ『Imagination ErA 東京』もありますね。初の東京ライブで、しかも入場フリーライブ。チャレンジングな夜になりそうですが、東京に来たことはありますか?

アップロードした画像あとむ(Vo./Ba.)

僕ははじめてです。せっかくの機会なのでいろんな場所に行ってみたいけど、人が多すぎてげんなりしないか心配です。

アップロードした画像あげは(Vo./Gt.)

私は高校の修学旅行以来です。又吉直樹のエッセイ『東京百景』が好きなので持っていくか、やはりそこは持っていかないべきか悩んでます。

アップロードした画像ライター三橋

ぜひ又吉さんの青春をなぞりながら聖地巡礼してみてください(笑)。

最後に、『Imagination ErA 東京』への意気込みをお願いします。私も楽しみにしています!

アップロードした画像あとむ(Vo./Ba.)

どんなことができるか、とにかくワクワクしています。はじめての場所、はじめてのハコで、とても緊張しますが、楽しみます。

アップロードした画像あげは(Vo./Gt.)

初の東京で、ワンマンで、とにかく自分のなかではホラー映画を観る以上の大挑戦だと思っているのですが、同時にとても楽しみです。みなさん、ぜひ遊びにきてください!

(取材/文・三橋温子)

INFORMATION

RELEASE
New EP
『風がゆく若色の街』
奏人心

リリース日: 2025年8月6日(水)
収録曲: 全4曲


01. それがすべて
作詞・作曲:山路あげは
編曲:奏人心
リードVo:山路あげは

02. ユース・キャンドル
作詞・作曲:永松有斗夢
編曲:奏人心
リードVo:永松有斗夢

03. フィールドアンドサンセット
作詞・作曲:山路あげは
編曲:奏人心
リードVo:山路あげは

04. sin
作詞:永松有斗夢
作曲・編曲:奏人心
リードVo:永松有斗夢

プロデュース:non-commital
レコーディング&ミックス・エンジニア:non-commital
レコーディング&ミックス・スタジオ:UNKNOWN SOUND STUDIO
マスタリングエンジニア:小泉由香(オレンジ)

ジャケットの漫画:山路あげは

LIVE
奏人心 第1回福岡ワンマンライブ 2025
“巻き起こる福岡の突風”

日時: 2025年8月22日(金) open 18:30 / start 19:00
場所: 福岡The Voodoo Lounge
チケット: オールスタンディング2,500円(税込/ドリンク代別/整理番号付)(中学生以上有料/未就学児童入場・可)
問い合わせ: BEA 092-712-4221(平日12:00〜16:00)

DONUT Presents
Imagination ErA 東京
イマジネーションの時代

日時: 2025年10月1日(水) open 18:00 / start 19:00
場所: 下北沢THREE
チケット: フリーコンサート(入場時に要1ドリンク代)
整理券: イープラスで先着発券
問い合わせ: 下北沢THREE 03-5486-8804

※整理券をお持ちでない方は、整理券をお持ちの方の後に入場。満員の際は、ご入場をお断りする場合がございます。

PROFILE

Photo by hisatomaru

奏人心(そうとしん)

福岡で活動するスリーピース・ロックバンド。永松有斗夢(ベース&ヴォーカル)、山路あげは(ギター&ヴォーカル)、今橋一翔(ドラム)の3人編成。メンバー全員、今年20才になる。思春期の終わり、街で暮らす少年少女の心の景色を詩的な表現と自由なビートで鳴らしている。

2024年11月1日にはファースト配信シングル「昼でも星は光って」をリリース。続いて同月13日にはファーストEP「SEARCH感受YOUTH」を4曲入りCDでなんと499円で発売! いち早くスペインのメディアで取り上げられ、その後、日本に入ってきた。時を同じくして、イギリス、ドイツ、イギリス、アメリカ、南米、フランスのラジオ局でもオンエアされた。

2025年に入り、ライブハウスのフロアでiPhoneで録った無修正ライブシングルをシリーズで配信リリース! ごまかしや修正等が一切ない、いま感じた気持ちがそのまま飛んでくる。

同年5月31日(土)博多のフェス「Bayside Music Jamboree2025」出演。初のフェス出演で大江慎也(THE ROOSTERS)、山口洋、オカモトショウ等と共演! 快挙!

そして7月2日 ニューシングル「それがすべて」を配信リリース! 福岡で暮らしている10代の女子が映し出した日常の向こうにある真理を歌った人間賛歌で、山路あげは(ギター&ヴォーカル)の生命力漲るヴォーカルが強烈なインパクトを放っている。ジャケットに描かれた“世界中で巻き起こる争いに嘆く女の子”のMANGAも衝撃的なシングルである。

8月6日、ついに奏人心の個性を決定的にする4曲入りアルバム「風がゆく若色の街」を配信リリースする。10代の女の子が映し出した日常の向こうにある真理を歌った人間賛歌「それがすべて」からはじまり、思春期の終わりをポップなメロディー・ラインでくるみ、チャーミングでリリカルに綴った「ユース・キャンドル」、窮屈な街の中から脱け出すには夢しかない、夢だけが自分の殻を破る「フィールドアンドサンセット」。若いということは無力であることを知り、終わることからはじまりの光を見つける「sin」。4曲で一つの物語は、街で暮らす少年少女の心の景色を鳴らしている。

プロデュースは前作同様、non-commital。UNKNOWN SOUND STUDIOでレコーディングされた。マスタリングは小泉由香(オレンジ)。

ジャケットのMANGAは街の中を泳ぐ奏人心の3人。作画はギター&ヴォーカルの山路あげは。背景にさりげなく描かれている実在するビルや看板に“FUKUOKA”への愛が感じられる。

先行シングル「それがすべて」は九州のLOVE FM「HOT20」の週間ランキングで第3位にチャートイン! さらにアメリカ、イギリス、カナダ、スイス、インドネシア、スペイン、フィンランドのメディアで取り上げられ、特にアメリカのアンカレッジ、フロリダ、ワシントンのラジオ局ではローテーションに入る。「ユース・キャンドル」は福岡KBCラジオ8月度パワープレイ(KBC MUSIC SPLASH)に決定! 福岡から、九州から、新しい世代の歌が放たれる。

8月22日(土)福岡The Voodoo Loungeにてはじめてのワンマンライブも決定!

若い世代で福岡のバンドというと必ず名前があがるバンドで、奇をてらうことや、情報にふりまわされることもなく、福岡の街でライブをやり続けている。

さらに10月1日には下北沢THREEにて、待望の東京での初ライブが決定した。はじめての東京でのライブにして初ワンマン! しかもフリーライブ! 福岡では10代の子たちがライブに来て、タテノリに! 東京ではどんな光景になるのか? 福岡同様、ぜひご覧頂きたいシーンだ。