【奏人心】19歳の“突風ロックバンド”がインディーデビュー。福岡のライブハウスの遺伝子を全国へぶち撒ける!

三橋 温子

三橋 温子

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2022年に福岡で生まれた“突風”が、いま、全国に吹き荒れようとしている。

奏人心(そうとしん)は、メンバー全員19歳のスリーピース“突風ロックバンド”。高校の軽音サークルで結成され、2024年11月に1st Single『昼でも星は光って』と1st EP『SEARCH感受YOUTH』でインディーデビューしたばかりの新進気鋭のバンドである。

『昼でも星は光って』を最初に聴いたとき、イントロのドラムに鋭いギターと高速ベースが重なった瞬間に、10代のころよく通っていた小さなライブハウスへ心がトリップした。ボーカルの第一声〈汚い部屋の〉の〈きたな〉くらいで、もうこのバンドを好きになっていた。

10月に開催された『FM802 MINAMI WHEEL 2024』での評判も耳に届いており、どんなバンドなんだろうと思っていたが、ネット上に彼らの情報はまだ少ない。というわけで、メンバー本人に音楽やライブへの想いをインタビューした。


「どうにもならない思い」を感じて音楽を始めた

永松有斗夢(あとむ -Vo./Ba.)、山路あげは(Gt./Vo.)、今橋一翔(まさと -Dr.)の3人で活動する奏人心。全員、福岡在住だ。

結成のきっかけは、3人が通っていた高校の軽音サークル『ロックバンド塾』。永松と山路が組んでいたバンドに今橋が加わって、2022年7月に奏人心としてスタートしたという。

「音楽を始めたのは、ふだんの生活や環境にどうにもならない思いを感じていたから。スリーピースバンドをやりたくて奏人心を組んで、そのタイミングでベースを始めました」(永松)

「わたしは中学生のときの誕生日にギターを買ってもらって、それを機に音楽を始めました。当時、THE BLUE HEARTSを聴いていて、ギタリストに憧れていたんです」(山路)

「吹奏楽をやっていたんですが、やめたタイミングで有斗夢にバンドに誘われて。もともとドラムをやってみたかったので、奏人心を組むときに始めました」(今橋)

奏人心の突風サウンドを司る初期衝動あふれるベースとドラム、若さと渋みをあわせもつテクニカルなギター、その絶妙なバランスの理由がわかって納得する。

なお、奏人心というバンド名は、「一翔が急に口ずさんだ言葉」(永松)だそうだ。「人の心を奏でる」なんてステキな言葉、よく急に思いつくなぁ。

彼らはその後、地元福岡であっという間に頭角を現す。結成したその年の福岡県高校軽音新人コンテストで35組中1位のグランプリに輝き、九州朝日放送の高校生参加型バラエティ番組『高校生のじかん』に出演。同番組のテーマ曲制作、『ハイスク祭(フェス)』へのライブ出演など、若くしてバンドキャリアを着実に積みあげていった。

そして高校卒業後の2024年、1st Singleと1st EPを携えて、本格的なインディーデビューを果たしたのだ。

突風ロック4曲収録の1st EP『SEARCH感受YOUTH』

2024年11月13日(水)にリリースされた1st EP『SEARCH感受YOUTH』、読みかたは「サーチカンジュース」。「感受性を探し続けている若者」という意味だという。

収録4曲にひとことずつコメントをもらったので紹介する。

『昼でも星は光って』は、最高な突風ソング。向かう先にある壁を1発で取り払ってくれるような勢いソングです」(永松)

『007』は、歪んだ声と歌で誰かの衝動を肯定する歌」(永松)

『生き急げ!遅刻常習犯』は、高校生のときにはじめてつくった曲です」(山路)
「とにかくリズムがいい曲」(今橋)

『16winter Boy’s』は、16歳のころの自分が抱えていた“なにもできていない鬱憤”を、連続写真のように描写した歌です」(永松)

このコメントを聞いてもよくわかるが、4曲すべての作詞を担当する永松有斗夢(Vo./Ba.)は詩人だ。

〈星は回転数を上げる〉-「昼でも星は光って」
〈情念革命歌を歌って〉-「007」
〈HBの鉛筆でくだらねえ事を書くんだ〉-「生き急げ!遅刻常習犯」
〈冬色の街、電車/16番目のテネシー〉-「16winter Boy’s」

1曲にひとつ以上は、心に迫るフレーズが必ずある。「たぶん繊細で不器用な人なんだろうな」と思わせる言葉選びにグッとこずにはいられない。

歌詞だけ見ればブルースやフォークっぽい曲調を想像しなくもないが、実際は高速BPMでまくしたてる突風ロック。その、ポエティックな歌詞を惜しげもなくシャウトし解き放つ大胆さが、彼らの最大の魅力なのではないかと個人的に思っている。

「作詞をするときは、自分が置かれている環境やそこに付随する感情を表現しています。作曲は全員で。ドラムの気持ちいいリズムやギターのカッコいいフレーズを各自もち寄ったりして、そこからスタジオで構成を組み立てていくことが多いです。

どんな音楽をやりたいかでいうと、根底の芯の部分にはパンクがある。ただ、その芯から派生する枝の先にはいろんなものがあると思っています」(永松)

好きなアーティストを尋ねると、永松はandymoriや響心SoundsorChestrA、山路あげは(Gt./Vo.)は銀杏BOYZやゆらゆら帝国、今橋一翔(Dr.)はArctic Monkeysを挙げてくれた。

なるほど、音楽性はどのアーティストもそれぞれ異なるが、一筋縄ではいかない感性や時代を超越したバンドサウンドは、奏人心の楽曲にも共通している気がする。

そんな彼らの音楽はすでに国境を飛び越えており、スペインのメディアでいち早く紹介されたり、海外のティーンたちから「メンバーのイラスト入りの漢字バンドTシャツがほしい」と問い合わせが届いたりしているそう。3人が吹かせる風は、日本のみならず海外のリスナーにも刺激的なようだ。

「感じる音」を教わった初のレコーディング

実は、1st EP『SEARCH感受YOUTH』はCD限定リリースである。1st Singleとしてリリースされた収録曲「昼でも星は光って」以外、配信はない。

これは、奏人心をマネージするマネージメント・プロジェクト『BEAT HAPPY』のコンセプトによるもの。暴動クラブが所属するフォーライフ ミュージックエンタテイメント マネージメント事業部と、ライブ制作会社のHAPPY HEADS MUSICが立ち上げた、フィジカルリリースとライブにこだわり若いバンドを発掘・育成するプロジェクトだ。

『HAPPY HEADS』といえば、忌野清志郎が1987年にリリースしたライブアルバムのタイトルである。そして『BEAT HAPPY』には、かつて東芝EMIでRCサクセションや忌野の宣伝を担当していた、音楽マネージャー/プロデューサーの高橋Rock Me Baby氏が関わっている。

「『BEAT HAPPY』がそういうコンセプトなのは、フィジカルとライブが好きだから。僕たちのやっていることは、マーケット・リサーチを重視するAI文化大好きのデジタル脳から見たら、野球にたとえるなら2軍に思えるかもしれません。しかし、2軍がメジャー・リーグに勝ったら最高におもしろい! そんな想いで設立しました。

奏人心は、1組目の所属バンド。〈突風を掴む少女達〉〈星は回転数を上げる〉という言葉がBeatをともなって飛んできて、心にそのままブチあたりました。日本語のもつBeatと響き、美、野性、そして時代や型や枠にはめることができない突風のような自由なサウンド。僕が好きな日本語のロックを世界的にも、歴史的にも解き放ってくれるバンドです」(高橋氏)

福岡・UNKNOWN SOUND STUDIOでのレコーディングには、高橋氏も東京から駆けつけた。プロデュース・エンジニア・ミックスを務めたのは中西伸暢氏。福岡のバンド・PANICSMILE/IRIKOのギタリストであり、non-commital名義で音楽事業も手がける人物だ。

初のレコーディングに際し、山路あげは(Gt./Vo.)は中西氏から「感じる音」について教わったという。

「意識して聴こうとはしていないけれど、耳では感じとっている音というものがあって、それをとり入れるのもポイントのひとつと教えていただきました。たとえばクリーンのギターを重ねてみたり、アコギでリズムを入れてみたり、ふだんは演奏していない音をあえて入れるんです。レコーディングって作品づくりなんだなと勉強になりましたし、音楽を聴くときにも意識して聴くようになりました」(山路)

「自分の作品がきれいな音で聴こえたとき、最初に音楽をつくろうとしていたころの気持ちを思い出しました」(永松)

「4曲を通しで何テイクも録ったのですが、そのとき気づいたのが、『自分って疲れに限界がきたほうがいい演奏ができるな』ということ。レコーディングすげぇ……!と思いました」(今橋)

ちなみに、アーティストにレコーディング中のエピソードを尋ねるとだいたい出てくる「グルメ」の話も、例にもれず聞くことができてなんだか微笑ましかった。

「みんなでうどんを食べたのがいい思い出」(永松)

「スタジオの隣にある、福岡のバンドの大先輩がやっている『加藤小判』というスパイスカレー屋さんのカレーをみんなで食べました。エンジニアルームがカレーの匂いになったのも楽しかったです」(山路)

「気持ちをそのまま出す」ライブをしたい

現在、福岡のライブハウスを中心にライブを重ねている奏人心。最近は関西方面にまで進出してきているので、近いうちに東京やそのほかの地域にも“突風”を吹かせにきてくれるかもしれない。

激しく熱く、オーディエンスとの心の距離も近い彼らのライブだが、ライブパフォーマンスで大切にしていることはなんだろうか。最近の印象に残っているライブとあわせて聞いてみた。

「ライブで大切にしているのは、気持ちを出すこと。印象に残っているライブは、福岡のライブハウス・秘密の4周年イベント(『HIMITSU MUSIC FES』-2024.11.04)です。秘密は僕たちの始まりの場所。その場所で、これまでやってきたことを表現できたから」(永松)

「わたしも同じです。2年前に人生ではじめてライブハウスに行き、はじめて心を動かされた場所が秘密でした。奏人心を結成して以来、『わたしたちの曲や声や体や楽器を目に焼きつけろ!』という気持ちでステージに立ってきましたが、秘密の4周年イベントでは、そんなわたしたちのステージをお世話になってきた人たちが温かい顔で見てくれていて……。その顔はずっと忘れないと思います。これからもよろしくお願いします」(山路)

「ライブでは、自分のなかにある暴れたい気持ちをそのまま出しています。印象に残っているのは、ミナホ(『FM802 MINAMI WHEEL 2024』-2024.10.12〜14)かなぁ。めちゃくちゃいいライブができました」(今橋)

今後出演してみたい憧れのハコは、3人そろってZepp Fukuoka。

九州最大級のキャパ1,500人を誇るライブハウスで、九州一、いや日本一、いやいや世界一の瞬間風速を記録する圧倒的なステージを魅せつける——。そんな日がそう遠くない未来に実現したなら、「日本の音楽シーン、やるじゃん!」と思いきりガッツポーズしてしまう気がする。

自分たちの衝動を信じて、吹き荒れろ、奏人心!

(取材/文・三橋温子)


PROFILE

奏人心(そうとしん)

19才の3人。永松有斗夢(Vo,Ba) 山路あげは(Gu,Vo) 今橋一翔(Dr)。
飾らないけど詩的な言葉と激しいビートでシャウトする福岡の突風ロックバンド。結成半年後に九州朝日放送「高校生のじかん」で特集され、ライブハウスでのワンマンを成功させ、同番組のテーマ曲に大抜擢! 番組のフェス「ハイスク祭のじかん」JR九州ホールにも出演し、さらには俳優・ミュージシャンの石橋凌が審査委員長を務める福岡県高校軽音新人コンテストでグランプリに輝き、高校生のトピックとなる。2024年10月「FM802 MINAMI WHEEL2024」に出演。“福岡のライブハウスの遺伝子を持ってきたので、それを感じてもらえたらと思います”というMCとともに、アッという間の35分! 灼熱のLIVEを展開! 全出演者の中で一番無名にも拘わらず、いきなりのダークホースとなる。福岡、広島、宇部で立ち上がりつつある10代のロックバンドのムーヴメントの中心的バンドのひとつとして注目されている。
11月13日にはファーストEP「SEARCH感受YOUTH」を4曲入りCDでなんと499円! サブスク、配信は一切なく、CDのみでのリリース。
福岡在住で、福岡のバンドであることに誇りを持ち、福岡を拠点に、福岡から世界を射ち落とす。奏人心は奇をてらうことや、情報にふりまわされることもなく、今日も福岡のライブハウスのステージにあがっている。CDもライブも「最高に大きな音で浴びたいバンド」だ。

メンバー

永松有斗夢(Vocal / Bass)
山路あげは(Guitar / Vocal)
今橋一翔(Drums)

活動開始

2022年

主な活動拠点

福岡県

HP / SNS

X @soutosin6969
YouTube @奏人心

RELEASE
1st EP
『SEARCH感受YOUTH』
奏人心

TOWER RECORDS ONLINEで購入する

リリース日: 2024年11月13日(水)
形態: CDシングル / 4曲収録
価格: ¥499(税抜価格¥454)
レーベル: BEAT HAPPY / FORLIFE SONGS
※CDのみの発売。サブスク、配信等は一切ありません。CDで最高に大きな音で聴いてください。

収録曲:
01. 昼でも星は光って
02. 007
03. 生き急げ!遅刻常習犯
04. 16winter Boy’s
(全作詞:永松有斗夢、全作曲編曲:奏人心)

1st Single
『昼でも星は光って』
奏人心

配信・ダウンロードで聴く

リリース日: 2024年11月1日(金)
形態: シングル / サブスクリプション・サービス
レーベル: BEAT HAPPY / FRIENDSHIP.
収録曲: 01. 昼でも星は光って(作詞:永松有斗夢、作曲編曲:奏人心)

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