お宝MUSIC発掘#1 − BACHICO / Dr.FOOL / パレットパレッツ

倉田 航仁郎

倉田 航仁郎

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近頃、新しい音楽に対するアンテナは何かを受信しているだろうか?

サブスクが浸透した今、これまでのようにラジオやテレビから流れてくる音楽だけが「流行」として捉えられることは少なくなったように思う。自動的に選曲された、曲名もアーティスト名も知らない楽曲を浴びるように聴くことが当たり前になりつつあるのではないだろうか。

そんな中でもアンテナを少し高くして聴いてみると、不意に心に刺さる、素晴らしい曲との出会いがある。そこで今回は、サブスクを聴いていて筆者が近頃グッときた楽曲の中から3曲を抜粋してご紹介していく。


「雪解」
BACHICO

透明感と儚さが同居した唯一無二の声を持つVo.ナカジョウ。彼の魅力を最大限に引き出す楽曲でリスナーを掴んで離さないBACHICOが、2020年5月に配信限定でリリースした2ndシングル『雪解 / 秋桜』の1曲目に収録されているタイトルトラック、「雪解」。

どこか懐かしく、ノスタルジックさを感じさせる曲の雰囲気を見事に表現している、モノクロを基調としたオフィシャルミュージックビデオも公開されているため、ぜひ合わせてチェックしてみて欲しい。

ただただ無機質で、全てを白で飲み込んでいく冬と自分の想いを重ねながら、まだ見ぬ春を憂う主人公の気持ちを歌い上げている。ただ優しいだけでなく激しさも併せ持った展開と、心地よいギターの音色。これらが歌声を際立たせながら、全てが見事に融合した1曲。

BACHICOの楽曲は印象的で、一度聴くと耳から離れることはないだろう。

「始発」
Dr.FOOL

パーティ感が強く、踊れるロックでライブハウスを沸かすDr.FOOLにあって、異彩を放つミディアムテンポの1曲だ。サブスク配信限定で2020年3月にリリースされたMiniAlbum『FOOL BOX mini』に収録されている。

ジャジーかつメロウな雰囲気で切ない男心と後悔を描くストーリー展開には、共感できる人も多いのではないだろうか。

Dr.FOOLは楽曲こそアッパーで盛り上がるものが多いが、その歌詞を読み解いていくと後悔や挫折といった、人間の弱い部分にスポットを当てていることが多い印象だ。その弱者は男性であり、そうした男性の切ない部分を見事に描き切った歌詞の世界と、それを表現する楽曲構成。そして、こうした全てを包み込んで歌い上げるVo.シゲの歌唱力と表現力は、彼らの世界観をリスナーの心に直接届けてくれる。

ここで重要なのは、Dr.FOOLの楽曲は弱さを掘り返して負の螺旋に身を投じているわけではなく、そうした中にいても明るく振る舞おうともがきながらポジティブになろうとしている姿を描いているという点だ。こうした姿勢が、多くのファンを惹きつける要因と言えるだろう。

今回ご紹介した「始発」も、そうした男性の後悔や強がりを的確に表現し、まるでドラマを見ているような気持ちにさせてくれる1曲となっている。

「自責HISTORY」
パレットパレッツ

イントロの1音目から耳を奪い、歌声の1声目から心を鷲掴みし、サビで陶酔させてしまうほどのインパクトと個性を放つパレットパレッツが2020年6月に公開した「自責HISTORY」。オフィシャルミュージックビデオは一見の価値ありで、とにかく難しいことを考えずにまずは聴いて、見て欲しい。

ガールズロックバンドと聞いてイメージするそれとは一線を画すほどに、いい意味で丸ごと裏切ってくれるパンチ力と歌唱力を持つ彼女たち。人を惹きつけるカリスマ性を感じずにはいられない。

激しい音に乗せて過激な言葉こそ使っているが、ただただ全てを否定しながら辛辣で攻撃的な言葉を羅列して罵倒するようなことは決してしない。誰しも感じたことのある刹那的な衝動や弱さ、切なさ、疑問、疑念を織り込みながら等身大で寄り添い、ポジティブに向かおうとする気持ちをすくい上げてくれるのが、パレットパレッツの魅力と言える。

「自責HISTORY」はそうした彼女たちの魅力が、攻め立てるようなシャッフルビートに乗せて表現されている。

(文・倉田航仁郎)

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