世界的なパンデミックを経たのち、昨年から今年にかけて大勢の元に少しずつ日常が戻って来た。しかし感染症は依然として音楽業界全体に大小様々な爪痕を残しており、現在首都圏を中心に活動するエレクトロユニット・ModernOld(モダンオールド)も、その被害に見舞われたミュージシャンのうちの一組である。
夢にまで見た音楽活動をウイルスに潰され、お世辞にも順風満帆とは言えない道を歩みながら、それでも夢を繋いでやっとここまで来た。
目に見える姿形やスタイル、ラベリングに囚われず、ただただ“音楽”をやりたい。その純粋な思いの先に生まれたのが、ユニット初となるセルフタイトル音源『ModernOld』。2024年4月にリリースされた、彼らの渾身の力が注がれたファーストアルバムだ。
立ちはだかった障害、それでも諦めなかった音楽の道
「結成は自分たちが大学3年の時です。当時は4ピースバンドでしたがその後コロナ禍に突入し、ほとんど活動できないまま2021年に愛媛から2人で上京してきました。約半年間マリオカートのみ行う生活でしたが(笑)、2021年10月頃、Gota(Beat,Sampler,Gt,Cho)の知人の紹介でようやくライブ活動を開始することができました。
紆余曲折ありましたが、元々目指していたバンドスタイルから現在のビートを中心としたダンスミュージックスタイルに行き着くまでに約2年。方向性が定まった2023年末からアルバム制作に専念し、2024年4月末に1stアルバム『ModernOld』をリリースして今に至ります」
メンバーの一人であるRyutaro(Vo,Ba,SynthBa)は結成の経緯をそう語る。
ユニットの名前を冠してからは実に丸3年が経過し、当初思い描いていた未来予想図とは大きく異なる現在地に辿り着いた二人。だがジャンルレスに“音楽”そのものを愛する純粋で柔軟な価値観と、自身の手でそれらを生み出したい、という思いの強さ。その二つが今のユニットの確立を支える、何よりの基軸となっている。
二人のルーツミュージックや提唱するサウンドスタイルにも、それらは如実に表れていると言っていい。
「サウンド面や音楽の姿勢として一番大きな影響を受けたアーティストはOasisです。あとはThe Beatles、The Stone Roses、Primal Screamなどのブリティッシュロックバンドとか。そこに70年代のファンク、ソウルなどのブラックミュージックや、The Chemical Brothers、Daft Punkなんかのエレクトロミュージックもルーツに加わってます。
バンドコンセプトは総じて『踊れる音楽』を演奏すること。中でもイメージはクラブミュージックですね。棒立ちで聴くよりはお酒を飲みつつ踊って欲しいし、どんな場所でも会場をクラブに変えてやる、と思ってて。歌声も楽器の一部だと考えているので、歌詞は意味の大切さより、聴いた時の気持ちよさや口に出して気持ちのいい言葉・連続性を意識しています。
サウンド面はループミュージックの範囲内で多彩さを出せるよう、エレクトロサウンドや民族的な音も導入して多ジャンルをクロスオーバーさせてみたり。その中でもシンプルな4つ打ちディスコを基盤にして、各楽器のタイム感に関しては特に気を配ってます」
様々な試行錯誤を経て、時には一見無駄にも思える寄り道もして、ずいぶんと遠回りをしてきた先に辿り着いた場所。それが“音を聴いて自然と身体が動き出す”という、音楽というカルチャーの最も原始的な地点だったことも、ややアイロニックで興味深いユニットの歩みのひとつだろう。
守るのは音楽の原点ただひとつ、挑戦欲と好奇心に満ちた1st作品
「今回のリリースタイミングは、ようやく今のスタイルでユニットとして自信が持てたから、という感じでしょうか。元々バンドがやりたかったけど、メンバー探しもずっと難航していて。当初1~2年は弾き語り曲にループビートとエレキギターを乗せて、ネオフォークという解釈でライブしたりもしてました。
その後いろんな音楽体験を通じて、必ずしもバンドでないと、という気持ちも徐々に薄れていって。2023年9月頃に今のスタイルを確立して、ようやく名刺となるアルバムを作ろうと思えたんです。
作品のポイントは、気づかない内に曲が変わってる、気づいたら大火傷してるぜ、みたいなところ。全編4つ打ちが基盤の踊れる曲ですが、曲が止まることなく最後まで続き最初に戻るという、音が絶えないループミュージックになっています。
その中でも飽きが来ないよう3部構成にしました。インタールードがジャンルの変わり目になってるので、アルバムを聴く中でのアクセントになるかなと。通しで30分だし、いい意味で聞き流してアルバム全編を1曲のように聴いて欲しいですね」
自分達がやりたいのは“バンド”か、あるいは“音楽”そのものか。活動をする上で数多の障害を前にしつつ、何度も自問自答を繰り返した。
その中でどのような形式・スタイルであろうと、“音楽”をやることを選んだ二人。結果、様々な既存の価値観や思い込みを捨てて作り上げた処女作は、セルフタイトルを冠した名刺作でありつつ、実験的な手法も多々散りばめられた挑戦欲・好奇心に満ちた1枚になっている。
「今後の目標として、まずは1stアルバムを引っ提げて、ライブハウスやクラブなんかのイベントにたくさん出演したいです。場所問わず俺たちの音楽を聞いて欲しいですね。将来は渋谷WWWでの演奏と、フジロックに出演します。
あとは、クラブで自分達のイベントを持つことにも挑戦したいですね。DJのプレイでお客さんが自由に揺れてる空間に出演して、曲をシームレスに繋げて音が止まる瞬間をほとんど作らず、お客さんは変わらず揺れ続ける。そんな場を生演奏で演出したいです」
感染症の猛威の中で、その道を諦めざるを得なかった人も大勢いる。それでも彼らは、自分達が長年憧れていた音楽活動を手放す道を選ばなかった。
険しい茨の道を歩んだ先に、“楽しい音を鳴らす”というある種原初的な音楽の境地に辿り着いた二人。
だからこそこれからのModernOldは、きっとどんな所でも楽器を奏でるのだろう。用意されたのが立派なステージでも、何もない野晒しの地でも。目の前に一人だろうと、あるいは大勢の群衆だろうと、自分達の音楽で楽しく踊る人々がいるかぎり。
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MESSAGE 初めましてModernOldです。最後まで読んでいただきありがとうございました。 今回の記事内での言葉の説明より、実際に音楽を体感して欲しいので、ぜひ音源を聴いてライブに来て欲しいです。 これから音源もどんどんリリースして、たくさんライブをしてもっと有名になって、誰もが知る存在になって会場を沸かせます。 各種SNSも絶賛更新中です。 気になったら覗いてみて、友達にもおすすめして、みんなで俺たちの成長をチェックしてください。 よろしくお願いします。
(文・曽我美なつめ)
PROFILE
ModernOld(モダンオールド)
日本のエレクトロニックダンスロックデュオ。2024年5月より現在の体制で活動をスタート。ブリティッシュロックに多大な影響を受けつつ、テクノ、ハウス、エレクトロ、その他お互いのルーツを混ぜ合わせ、様々な音楽のエッセンスを取り入れた変幻自在の「踊れる音楽」を展開する。
メンバー
Ryutaro(Vocal / Bass / Synth Bass)
Gota(Beat / Sampler / Guitar / Chorus)
活動開始
2020年
主な活動拠点
神奈川県、東京都
HP / SNS
X @_modern_old_
Instagram @_modern_old_
YouTube
TikTok @_modern_old_
LIVE
7/19(金) 御茶ノ水 KAKADO
7/21(日) 川崎 Y’s
8/11(日) 徳島 SEIDO MART
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