【MILKDOT】繊細に世界を彩る音楽の底に、飾らない彼の姿が見えた

宮本 デン

宮本 デン

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「親の影響で音楽は色々聴いてきましたが、初めて楽器を手にしたのは中学3年生のときに買った楽器屋で一番安いレスポールでした。当時はアンプの存在も知らないまま、ただ練習していたんですよ」

同じような経験をした人間なら「あるある!」と共感してしまいそうな音楽との出会い方を語ってくれたのは、今や次世代のシンガーソングライターとして注目を集める19歳のMILKDOT(ミルクドット)。

類い稀なる作曲センスで音楽を紡ぎ、気だるさと透明感を持ち合わせた独特な声で歌い上げる。若い世代を中心に人気を集めるシンガーソングライター/ボカロPである。

今回は、そんな彼に作曲を始めたきっかけや楽曲への想い、同世代のアーティストに対する気持ちまで幅広く聞かせてもらった。


作曲の才能が開花したのは「不純な動機」からだった

2021年に活動を開始して以降、中毒性の高い楽曲をいくつも発表してきたMILKDOT。アンプも知らないギター少年だった彼が作曲を始めたのは、ある人物への強い憧れがきっかけだった。

「初めてライブで生で見たとき、すべてが格好よくて衝撃を受けました。あまりに憧れすぎて、音楽で有名になれたら仲良くなれるかもしれないって思ったんです。ファンを拗らせた、不純な動機ですよね」

その人物とは、人気TVアニメ『チェンソーマン』のエンディング・テーマも手掛け、今や国民的な人気を獲得しつつあるシンガーソングライター・Eveである。

憧れであると同時に、音楽の理想像やルーツもEveの中にあると語ってくれた。ネットを主に活動拠点としていたEveの曲を聴くようになった流れで、そのままボーカロイドへもハマっていったのだという。特にロックとボーカロイドを組み合わせた「カゲプロ」や、Eveの音楽からの影響は、MILKDOTの中に今もなお色濃く残っているのだそうだ。

作曲を始めたきっかけについて、「不純な動機」と自虐的に語るMILKDOTだが、まさにそのいちファンとしての強い想いが彼の才能を開花させたのは紛れもない事実である。そこから彼は作曲を始め、半年でYouTube、TikTokへの楽曲の投稿を開始した。そして現在に至るまでハイペースでクオリティの高い楽曲を発表し続け、2022年には完全自主制作により『TEENAGE』というアルバムをリリースしている。

MILKDOTは、憧れの人が立つ同じ場所へと着実に歩んでいるのだ。

「格好いいと思うものを詰め込むようにしている」
気だるさや儚さの根底にある確かなもの

MILKDOTといえば、「鬱曜日」に代表されるように気だるさや儚さを繊細に表現した曲が特徴的な印象を受ける。

『鬱曜日』
MILKDOT
youtube動画


しかし彼に作曲について語ってもらったとき、出てきたのは複雑さとは真逆の、飾らない無邪気な回答だった。

「作曲をするときは、僕が格好いいと思うものを詰め込むようにしてます」

一度聴いたら忘れられないような中毒性の高い曲を多く生み出してきただけのことはあり、ギターのリフやメロディの「格好いい」へのこだわりは強いのだという。

彼の曲は旋律のキャッチーさだけでなく、独特な心地よい声で歌い上げられる歌詞も高評価を得ている。言葉遊びを張り巡らせた歌詞を書いたかと思えば、率直な言葉のみで構成される歌詞もあり、いずれもスッと頭に入ってくる力を持つ。

ヂラフマガジンでのベッドルーム・ポップ新世代アーティスト特集をきっかけにタイトルがつけられた「ベッドルームポップ」などは歌詞を聴かせたい気持ちが強く、それ故に簡単な言葉を使うように心がけているのだそうだ。

『ベッドルームポップ』
MILKDOT
youtube動画


さらに、彼の曲の魅力は旋律や歌詞のみに留まらない。その曲が形作る世界観も人気の要因の一つである。

世界観は自分の頭の中だけで構築することもあるが、曲のテーマやタイトルから、イラストレーターとイメージを擦り合わせた上で構築されることも多いのだという。創作の着想はあらゆるコンテンツから得ているらしく、ここでも「自分が格好いいと思うもの」をインプットとしているであろうことがうかがえる。

MILKDOTの魅力は、「自分が格好いいと思うもの」をしっかりと根底に置いた上に形作られているのだ。

彼が自ら“お気に入り”と称する「スケープゴート」は、まさにその「自分が格好いいと思うもの」を詰め込んだ曲といえるのではないだろうか。

『スケープゴート』
MILKDOT
youtube動画
「自分の可能性をどんどん試していきたい」
SNSで自ら道を切り拓くMILKDOTの展望

インターネットが高度に発達した現代社会では、SNSで自らをプロデュースし未来を切り拓くアーティストも多い。例に漏れずMILKDOTもその一人である。

こうしてSNSを駆使し活動していく中で、同世代のアーティスト同士の繋がりができることもある。MILKDOTにとって、気になる存在はいるのだろうか。

「気になる存在といえば、なとり(@Siritoriyowai_)くんです。お互い活動初期にTikTokを通して知り合いました。当時から唯一無二のリズム感や作曲センスがあって尊敬していますが、同時に勝手にライバルだと思ってます(笑)」

なとりといえばYouTubeやTikTokを中心に活動し人気を集め、2022年9月7日にリリースされた「Overdose」で一躍有名になったアーティストである。

『Overdose』
なとり
youtube動画


偶然にもMILKDOTと同じ19歳であり、ベッドルーム・ポップ新世代アーティスト特集でも二人を同じ記事内で取り上げている。同記事を担当した筆者は、それぞれに違う光るものがあると思いつつも、二人にはどこか通じる部分があると感じていた。そのため、親交があったのは驚くと同時に妙に納得させられる。

「今はシンガーソングライター/ボカロPで肩書きが二つしかないのですが、今後は興味がある分野にチャレンジしていきたいと考えています。他の人へ楽曲提供して作曲家になったり、編曲家としてお手伝いしてみたり、アパレルを始めて店長になってみたり! 音楽を主軸に自分の存在を世に知らしめつつ、自分の可能性をどんどん試していきたいです」

19歳のMILKDOTの更なる躍進と、今後の活動に注目していきたい。

(文・宮本デン)


PROFILE

MILKDOT(ミルクドット)

19歳のボカロP/シンガーソングライター。作曲歴半年程からYouTubeやTikTokでオリジナル楽曲の投稿を始める。生まれ持ったキャッチーなメロディセンスと気だるさや儚さが混ざった世界観のある歌声が特徴的で、じわじわと注目を浴び同世代の若者を中心に人気を集める。最新型のベッドルーム・ポップアーティスト。

活動開始

2021年

HP / SNS

Twitter @oOvivinbaOo
Instagram @milkdot9
TikTok @milkdot9
YouTube @milkdot_official

MESSAGE

自分らしさ全開でこれからも音楽やっていこうと思います。普段から聴いてくれてる人は本当にありがとうございます。大きいアーティストになって皆に更に良い楽曲を聴かせるためにも日々精進します、よろしく!

MILKDOT

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