MONDO GROSSOの大沢伸一がオーストラリア出身のRHYME(ライム)と結成したRHYME SOの「Fashion Blogger」のミュージックビデオが、先日「LONDON FASHION FILM FESTIVAL 2020」で“Best Music Award”と“Best Actress/ Model Award”の2部門で大賞を受賞し、注目を集めた。
満島ひかりをフィーチャーした「ラビリンス」をヒットさせた2017年以降、以前にも増して大沢伸一の話題を耳にする機会が増えたように思う。2000年にANA沖縄キャンペーンソングとして大ヒットしたMONDO GROSSOの「Life feat. bird」の新録版が、再びANAのCMに起用されたことも記憶に新しい。
ヂラフマガジン読者の中には、DJやプロデューサーとして活躍する大沢伸一のソロプロジェクトであるMONDO GROSSOが、もともとは京都で結成されたバンドだったことを知らない方も多いのではないだろうか。
「ラビリンス」で大沢伸一の存在を知った若い世代のリスナーのために、MONDO GROSSOが発表した7枚のフルアルバムを紹介したい。
『MONDO GROSSO』(1993年)
海外からも評価されたデビューアルバム
1991年に結成されたMONDO GROSSOが、フォーライフ・レコードから発表した1stアルバム。BAHIA SUNSETSやSECRET VIBESといったMONDO GROSSO名義以外のユニットの曲を多数収録しているので、コンピレーション的な作品と捉えることもできる。
バンド時代の作品は傑作ばかりだが、ドイツ盤も発売され、ヨーロッパのアシッドジャズ・シーンからも高い評価を受けたこのアルバムを、まず聴いていただきたい。
本作収録曲の「Souffles H」をMASTERS AT WORKがリミックスした12インチシングル(アナログレコード)が、ニューヨークハウスの名門レーベルとして知られるNite Groovesからリリースされ、大ヒットしたことも伝えておきたい。活動の初期からMONDO GROSSOは海外からも支持を得ていた。
『Born Free』(1995年)
ラップと歌モノで構成された2ndアルバム
人気曲「Tree, Air, and Rain on the Earth」を収録したミニアルバム『MARBLE』や、傑作EP『invisible man』、リミックスアルバム等を挟んで発表された2ndアルバム。『MONDO GROSSO』が複数の異なる名義の楽曲を収録していること考えると、初のオリジナルアルバムと言えるのかもしれない。
B-BANDJのラップを乗せたヒップホップ色の強いトラックと、複数の女性シンガーをフィーチャーしたヴォーカル曲で構成された本作のアナログ盤は、『Born Free to Rhyme』と『Born Free to Sing』の2枚に分けて発売された。
MONDO GROSSOと縁の深いThe Room(渋谷の老舗クラブ)等でヘビープレイされた「Family」は、ヒューバート・ロウズのカバーながら、初期MONDO GROSSOの代表曲のひとつに数えられるフロアアンセム。
『Closer』(1997年)
新生MONDO GROSSO第一弾
1996年、大沢以外のメンバーがバンドを脱退。大沢のソロプロジェクトとして再スタートを切ったMONDO GROSSOは、海外のミュージシャンやシンガー、エンジニア達と作り上げた3rdアルバム『Closer』を発表。大沢が作曲/プロデュースを担当したUAのヒット曲「リズム」(1996年)の路線をさらに成熟させた良質なR&Bを聴くことができる。
この時期、大沢は数多くのシンガーをプロデュースしてヒットを連発。バンド時代から活動を共にしてきたMONDAY満ちるや、Chara、りょう、荻野目洋子、クレモンティーヌ等の作品を手掛けている。
『MG4』(2000年)
MONDO GROSSO最大のヒット曲を収録したマスターピース
Sony Music Associated Records内に大沢が立ち上げた主宰レーベルのREALEYESからリリースされた4thアルバム。
ブラジル人女性シンガー/ピアニストのタニア・マリアや、全盛時代のTHE BRAND NEW HEAVIESのヴォーカリストを務めていたエンディア・ダヴェンポート、元GROOVE THEORYのアメール・ラリューといった錚々たる面々が名を連ねた本作は、世界25ヶ国で発売された。
自身のルーツであるジャズやブラジル音楽に、UKで当時流行していた2-Stepを取り入れてコアなリスナーの心を掴みながら、大ヒット曲の「Life feat. bird」で一般層からの支持も獲得した『MG4』は、MONDO GROSSOを語る上で絶対に外すことのできない重要作。
『Next Wave』(2003年)
大沢流ダンスミュージックの決定盤
3年ぶりにリリースされた5thアルバム。収録曲のほとんどが四つ打ちのダンストラックで、ファンを驚かせた。
2002 FIFAワールドカップのテレビ東京イメージソング「Blaze It Up」や、UA、BoA、Kj(Dragon Ash)を起用したヒットシングルを収録。BASEMENT JAXX「Red Alert」のヴォーカリストとして知られるブルー・ジェイムスや、ケリス、アーマンド・ヴァン・ヘルデン、ハリー・ロメロ等、海外のメジャーアーティストも参加した本作も大ヒットを記録している。
「リズム」以来となるUAとの共演曲「光」を是非。
『何度でも新しく生まれる』(2017年)
MONDO GROSSO初の全曲日本語ヴォーカルアルバム
UA、bird、満島ひかり、INO hidefumi、大和田慧、二神アンヌ、Kick a Show、YUKA(moumoon)、下重かおり、やくしまるえつこ、齋藤飛鳥(乃木坂46)を迎え、14年ぶりに発表された6thアルバム。かつて大沢と共に名作を生み出したbirdとUAの参加は、いちファンとして嬉しい限り。
満島ひかりをフィーチャーした「ラビリンス」は、MONDO GROSSOの新たな代表曲と言っても過言ではない至極の名曲。「RECORD STORE DAY 2017」限定商品としてリリースされた12インチシングルは、瞬く間に完売している。
『Attune / Detune』(2018年)
『何度でも新しく生まれる』の続編的作品
現時点での最新アルバム。SHAKKAZOMBIEのOSUMIことBIG-Oとの10年ぶりのコラボ曲「One Temperature」や、ドラマ『きみが心に棲みついた』の挿入歌「偽りのシンパシー」(ヴォーカルはBiSHのアイナ・ジ・エンド)等、前作と同様に多くのゲストを迎えて制作された。
ACOが歌う「KEMURI」の英語版「KEMURI (Retune)」の歌と作詞を担当したRHYMEがプロデュースしたミュージックビデオも必見。
(文・五辺宏明)
PROFILE
MONDO GROSSO(モンド・グロッソ)
日本の音楽プロデューサー、大沢伸一のプロジェクト。名前は伊語で“大きな世界”の意。1991年に京都で結成。当初は吉沢はじめ、中村雅人らのバンド形式で活動。92年にメジャー・デビュー。海外での評価も高く、95年の『Born Free』後には欧州ツアーを敢行。その翌年より大沢以外が脱退。以来、さまざまなアーティストとのコラボレーションを含むプロジェクトとして継続。プロデュースやリミックスなども多数。一時活動休止し別名義やDJ活動などを展開。2017年に6thアルバム『何度でも新しく生まれる』、2018年にその続編的なアルバム『Attune / Detune』をリリース。(TOWER RECORDS ONLINEより抜粋)