あなたのスキルが誰かを導く灯台になる。音楽に特化したマッチングSNS『Signe』(サイン)

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私たちはそれぞれ違う不完全さを抱えて生きているが、それは決して悪いことではない。

不完全だからこそ、どんな方法であっても誰かと繋がり、言葉で伝え合って、足りない部分をうまく補いあうことができる。誰かと手をとって歩き出すと、自分だけではたどりつけないであろう場所に行けるかもしれない。

試用版を経て2021年7月に正式リリースされた『Signe』(サイン)は、音楽に特化したスキルシェアマッチングSNS。「あなた」と「誰か」との出会いや繋がりをサポートしてくれる存在として、これから多くの人の音楽活動を豊かにすると感じている。

今回は、Signeを開発運営するSigne Lab(サイン・ラボ)から、開発エンジニアである廣澤剛志さんと、ヂラフマガジン編集長であり株式会社ヂラフ代表取締役の三橋温子さんに話を伺った。

Signe 公式サイト


開発の経緯とSigneについて
——まずはSigneのサービス概要について教えていただきたいです。

廣澤: Signeにはアーティスト、音楽関係者、カメラマン、レコーディングエンジニアなど様々なスキルを持った方が登録していて、それぞれのスキルや活動拠点などで検索し「フレンド」として繋がることができます。

自分のスキルを活かして仕事をしたい人は「MV撮影できます」「楽曲提供できます」などのプランを掲載し、仕事を依頼したい人は興味のあるプランにエントリーします。そこから実際にお金の発生する取引をし、支払い・入金までSigneの中でできるのが強みですね。

現在、音楽に特化したクラウドソーシングサービスはあまりなく、あっても作曲やライブ出演などアーティスト向けのものがメインです。SNSのダイレクトメッセージや口約束のようなやりとりも多いのですが、それだとトラブルが発生した時に個人間でどうにか解決しなくてはいけないリスクもある。なのでそこはSigneが介入し、納品完了後に入金されるフローなどを導入して、ユーザーが安心して取引ができるようにしています。

——Signeだけの特徴やサービスのこだわりについて教えてください。

三橋: Signeはユーザーが全員平等な立ち位置であることが特徴だと思います。アーティストもクリエイターもイベンターも、すべての方が「音楽に携わる人」という同じポジンションの中で、互いにコラボレーションしてみんなで音楽を作っていく。表に立つ人も裏で動く人も同じであることがこだわりです。

お金の発生する取引が行なわれた際にサービス利用手数料をいただきますが、それもどちらか一方が負担するのではなく双方のユーザーの折半にしました。そういうプラットフォームはほとんど見かけません。

——Signeの概要や特徴を改めてお伺いすると、音楽に特化したこういったサービス自体に目新しさを感じます。そもそもの出発点である開発のきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

廣澤: 最初は僕個人の開発としてスタートしていました。そもそものきっかけはイベンターをやっている高校の同級生に話を聞いたことでしたね。

その友人は月に2、3回くらいのペースで渋谷のライブハウスでライブイベントを主催していて、昨年の3月くらい、ちょうど新型コロナウイルスが蔓延し始めたころに電話で話した時にやはりイベントを主催していくのは大変だと聞きました。

僕はウェブのエンジニアをしているのでもともとサービスを作ることに興味はあったんですが、友人の話を聞いて、友人の持っている問題だとか音楽業界に対して何かできないだろうかと思ったのがスタートですね。

——最初の段階では具体的にどのようなサービスにしようと思っていましたか?

廣澤: 最初はアーティストの活動の金銭面のサポートをしたいと思っていたんです。アーティストや音楽関係者がコロナ禍に陥り収入が減っていくのに、既存のサービスは音楽の活動自体をマネタイズできているものが少ない。

音楽活動をするためにアルバイトや別の仕事をする方は多いと思いますが、そのせいで音楽活動にかける時間が減ってしまうこともあると考えていて、そういった方たちが音楽活動だったり音楽活動に近いアウトプットで活動資金を集めたり活動資金を作ることができたらいいなと思っていました。

だから初期に考えていたサービス内容は、ファンクラブ向けのプランを作ってアーティストがファンサービスをしてその分のお金をいただく…というような月額制のものや単発のものでした。

——当初は廣澤さん個人の開発だったSigneが、三橋さんとの共同開発になっていった経緯が気になります。お二人が出会ったきっかけをお聞きしたいです。

三橋: 昨年からずっと、弊社のウェブメディア『ヂラフマガジン』を運営していく中で様々な音楽関係者の方がコロナ禍で大変な状況に陥っているというのを間近で見ていたんです。高校の時に通っていた地元札幌の大好きなライブハウスも閉店してしまい、メディアとしてだけでなくもっと別の角度からなにかできないかと方法を模索していました。

そういった中で様々なアイディアを考えていたのですが、それらは大体はわたし一人ではできないことばかりで。これは誰かと協力してやるべきことだと思い、SNSなどで探してたどり着いたのが、廣澤さんが書かれたSigneの構想についてのnoteでした。自分がやりたいことととても近く、すぐにコンタクトをとってリモートでお話を伺いました。

——そしてお二人がSigne共同開発者としてタッグを組んでいくのですね。開発にあたり大切にしていたことは何ですか?

三橋: ユーザーとなる方のヒアリングには注力しました。真のニーズを聞いてそれを形にしたいと思ったんです。わたしと廣澤さんがそれぞれで話を聞いたり、ライブハウスに一緒に行って話を聞いたり。アーティストだけではなくイベンターやレーベルの方など、様々な方に話を聞きました。

ヒアリングしていく中で感じたのは、アーティスト側は金銭支援よりも人的支援、一緒に音楽をする仲間や活動を支えるスタッフといった人脈作りをサポートするほうにニーズがあるということ。現在は音楽を目指す人も多様化していて、「音楽一本でやっていくぞ!」という方ももちろんいるのですがそうではない方も多いんです。本業がありつつ、音楽も真剣にやっている人が増えている。音楽活動のためのお金は本業である程度補えてしまうんですね。

だから金銭支援よりもそういったサポートが欲しいという声が多かった。それを道標にしてSigneも徐々に方向転換をしていき、アーティストだけでなくクリエイターなども対象としたSNS+クラウドソーシングという現在の形に落ち着きました。

音楽を愛し、音楽に携わるすべての人とともに
——お二人がSigneを通じて実現したいことは何でしょうか。

廣澤: 音楽活動をする方が、人脈がないことにより音楽を続けられなくなってしまうのは悲しいことだと思っています。一番思うのは、音楽を始めたい人や続けたい人がより良い環境で音楽をできるようになることです。音楽を続けるために必要な人材や資金をSigneのサービスを使って集めていく。それによっていい音楽を作ることができたり、音楽活動を続けていける人が増えるのが理想です。

三橋: わたしは昔から小さいライブハウスに通っていて、メジャーアーティストではない音楽のあり方を現場で見てきましたが、今はその頃以上に音楽の発信手段がすごく多様化していますよね。いい音楽は資本があるかないかではなく、もしかしたらスキルの有無でもないかもしれない。

Signeに様々な人材が集まっていって、互いに刺激し合いながらいい音楽を作り発信していく。以前の音楽活動のゴールが大手事務所との契約やメジャーデビューだとしたら、それと同じようにSigneを使うことによって活躍できるような、そういったインディペンデントな世界観を作りたいです。

音楽をやっている人、携わりたいと思っている人たちから「Signeやってる?」みたいな会話が出てくるのを目指したいですね。Signeのアカウントを交換しておけばその人の音楽性もわかるし安心だし、何か仕事をしたい時にすぐ頼める。そういったものになればいいなと思います。

——本来のSNSのように、日常に近い感覚で使われるようになっていくといいですね。

廣澤: 作詞作曲ができたりレコーディングのエンジニアだったり、音楽関係のスキルを持った方に使って欲しいのは勿論ですが、音楽業界に携わってこなかった方にも音楽業界を盛り上げるという意味で使ってほしいなと思います。多種多様な人が集まって、コラボレーションが生まれていったらいいなと。音楽業界はけっこう閉鎖的だから、どうやって業界に入ればいいかわからない人もいると思うんです。そこの間口も広げたいですね。

——なるほど。ちなみにSigneの名前の由来はなんですか?

廣澤: これは僕が一人で構想を練っていた時から決めていたものなんですが、代表的なファンサービスといえばサインをすることですよね。サインは本来英語で”autograph”ですが、語感としてわかりやすい”sign”をベースにして、スペルはフランス語に倣って”e”を入れオリジナリティを出しました。

名も知らないアーティストの路上ライブを見た子供が「お兄さん格好いい! サインちょうだい!」といってサインをもらうような、そんなあたたかみのある感じをイメージしています。

好きな音楽、好きなアーティスト
——お二人の音楽への思い入れについてもぜひお聞きしたいです!

廣澤: 僕は94年生まれなんですけど、当時はバブルの後でJ-popのCDがすごく売れる時代だった。子供の頃に親戚の集まりかなんかで僕が歌ったのがPUFFYだったらしいんです。『アジアの純真』だったと思います。

大人になって初めて知ったんですが『アジアの純真』の作詞作曲は井上陽水さんと奥田民生さんで、今思うと自分の好きな音楽の源流ってその辺にある気がしています。ギターのちょっと乾いた音というか、音数が少ないというか。奥田民生さんだったら『イージュー☆ライダー』とかですね。ギブソンのエレキギターを持って乾いた音を鳴らすのが格好良くて。

それ以降、音楽は本当にずっと雑食で、最近では藤井風さんとかYOASOBIとかiriさんを聴いています。あとはきのこ帝国のボーカルの佐藤千亜妃さんのソロ名義のライブを川崎のオールナイのフェスイベントで観て、それがすごく良かったな。

——廣澤さんにとって音楽はどういった存在ですか?

廣澤: 感情の起伏がある中で、音楽に触れていると落ち着く。辛いことがあっても、音楽を聴けば心がフラットな状態に戻るんです。僕にとって音楽は心を落ち着かせる存在ですね。

——自分とは全く違う音楽との付き合いかたなのでとても興味深いです。三橋さんはどうですか? 以前インタビューさせてもらいましたが、これまでの音楽との繋がりかたを改めてお聞きしたいです。

三橋: わたしが小中学生だった90年代はバンドブームで、わたし自身もバンドから入りました。ライブハウスにはまったのは高校生のころで、ライブが好きというのはずっとベースにあります。音源を聴くのも好きだけど、本質はライブなんです。

20代のころから比べると減りましたが、ここ数年もライブやフェスにはかなり行っていたと思います。毎週のように生の演奏を聴いて過ごしていたので、コロナ禍でライブやフェスに行けなかった時期は本当につらかったですね。

——最近だとどんなアーティストを聴きますか?

三橋: 近年ずっと推しているのはMellow Youth。以前『ヂラフマガジン』でもインタビューさせていただいたんですが、楽曲も演奏もテクニカルで大人っぽい艶があって好きです。男性ツインボーカル、渋めの声と甘めのハイトーンボイスの掛け合いが新鮮で、しかもAORやシティポップ、ロックなど色々な要素やながれをくんでいるんです。

あとはドミコ、Yellow Studs、キタニタツヤ、yodomiなどなど…。10代から好きでずっと聴いているアーティストもたくさんいます。最近、最愛のアーティストであるTHE BACK HORNギタリストの菅波さんにインタビューさせていただける機会があって、めちゃくちゃ感激しました!

これからの音楽に寄り添っていくため
——昨年は新型コロナウイルスの影響で音楽業界も大打撃を受けましたが、音楽がこれからどういう形で機能するか、音楽がどういった存在になっていってほしいか、お二人のお話を伺いたいです。

三橋: コロナ禍で音楽業界は苦境に立たされましたが、一方でいろんなプロジェクトが立ち上がったことで逆に音楽の強さみたいなものを感じて。それって音楽好きじゃなくても感じたのかな?と。音楽を大事にしている人がこんなにいるということを世の中に知ってもらえたのは、カルチャーを守る第一歩にはなったかもしれないと個人的には思います。

最近では様々な立場の人たちが様々な方法を模索しながら、ポストコロナ時代のライブやイベントのあり方を確立しています。音楽好きにとっては新鮮に感じられて、音楽にあまり触れてこなかった人にとっては新たな世界が開けるような、そんな場が増えていけばいいなと思いますね。

廣澤: コロナ禍は悪いほうへ作用しただけではなく、音楽の可能性を広げた気がしています。例えば配信ライブなどで会場のセットをする方や演出家の方、色々な業界にいる人たちが映画を作るようにライブを作っている。やり方や携わる人が変わってきている気がしています。

この先それがチャンスに変わって、音楽に携わる人がもっと大きく広がっていったら嬉しいですね。そして、その一翼を担うサービスとしてSigneを育てていければと思っています。

(取材/文/撮影・望月柚花)
(イラスト・シマヅサトシ)


PROFILE
Signe Lab

廣澤 剛志
(Tsuyoshi Hirosawa)

埼玉県出身。株式会社iCAREでフロントエンドエンジニアとしてJoin中。2020年コロナ禍、ライブハウスでライブを主催している友人が思うようにライブを開催できない状況を変えたいと思い、2020年夏からSigneを開発。

三橋 温子
(Atsuko Mitsuhashi)

株式会社ヂラフ代表取締役 / ヂラフマガジン編集長。札幌出身、武蔵野美術大学卒。エン・ジャパン(株)制作部で企業経営者や人事の取材・広告制作を経験後、2013年にライター兼デザイナーとして独立。Web・書籍・雑誌などのインタビュー記事や、紙媒体を中心としたデザインを手がける。10代からライブハウスやフェスに熱中してきた音楽愛を形にすべく、2019年10月に音楽発掘ウェブマガジン『ヂラフマガジン』をオープン。2020年10月に(株)ヂラフを設立。学生時代の著書に『超短編 傑作選』vol.3・4(創英社/共著)がある。